息子は絵の才能があったわけではない

養護学校高等部時代に描いた息子の絵は、数々のコンテストで賞をいただきました。

 

すると殆どの人に、「彼には絵の才能があったのよ。絵を描く感性を持ち合わせていたのよ。」と、言われますが、決して彼には絵の才能などありませんでした。

 

自由画を描き始めた頃の彼(自閉症の息子と絵:とにかく描こう!スクリブル時代)を見てもらえば分かると思います。

 

彼の感性を引き出してくださった諸先生方との出逢いがありましたが、この出逢いは、彼が引き寄せたものだと思います。求めるものがあり、その事に向かってコツコツと積み重ねていたことが引き寄せたもので、偶然ではなく必然だったと思います。

 

幸運は、日頃の積み重ねが引き寄せるものということは、絵だけでなく他のことでもたくさん有りました。

 

なので、息子の幸運は、彼自身が招いてきたことだと信じています。

 

自閉症療育に自由画の取り組みを勧めたときに「うちの子はそんな才能ないから・・・」と言われるので、私の息子には、『絵の才能があったわけではない』と、お話しするのですが、現在の彼だけを見て判断されるので、過去の息子から現在までの彼の絵の過程を見ていただこうと思います。

 

私は絵の心得があったわけではない

 

私には、絵の心得はありません。学生時代の美術の授業を受けただけのことですから、特殊な絵の技法など、全く知りません。

 

自閉症の息子に自由画を描かせるために、絵の技法など必要ありませんでした。

 

息子を好ましい人に育てたいという思いがあっただけのことです。

 

もし、私が美術大学卒で、自らも絵を描き、絵の技法に長けていたとしたら、おそらく私は息子を潰してしまっていたでしょう。

 

絵の知識は何もない、強いていうなら絵を観ることが単に好きだったことぐらいで、それもただ、好きか嫌いかの自分の好みで絵を観ていただけのことです。

 

そんな私だから、息子に絵を上手く描く方法など教えることはできませんでしたし、できないからしなかったので、そのことが良かったと思います。

 

私が彼に教えたのは、道具の準備と片付け程度のことで、あとは自由画の取り組み方を基本に守っていただけです。

 

自由画を始めるにあたって、トモニ療育センターの河島先生に勧められた一冊の本があります。

 

子どもの心と絵 吉田きみ子 著 文化書房博文社 発行

 

初版が1986年の本なので、現在、書店でこの本が購入できるのかどうかは分かりませんが、吉田きみ子著の他の本はあるのではないかと思います。

 

この本に書かれているのは、絵の技法ではありません。絵を描くことを通して子育ての基本が書かれているような本でした。

 

自閉症の息子の絵の取り組みが、何か一つでもヒントになって、絵に親しむ方が増えればいいなと思います。